めぐり逢うことばたち

短詩・樹花たまには歴史の歳時記 by かぐら川

2003年06月15日

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さるさる日記
■2003/06/15 (日) 「俳句文学館」(2)―ホトトギスとの出逢い

・長年俳句に親しんでおられる方でも「俳句文学館」というものがあることをご存じない方がおられるのではないかな、と思う。わたしも偶然知っただけのことで、そんなに有名な施設ではないようだし、まして観光施設ではないのである。

道に接して入り口があったので、まして時間のないことだけが念頭にあり、建物がどういうものなのかも見ないままに中に入る。中は事務所然としている。実際、1階は「社団法人俳人協会」(会長:鷹羽狩行氏)の事務所なのでした。
「文学館」は2階で、そこはそこそこの広さの静かな閲覧室でした。(入室料?100円也)

*先日ご紹介した協会のサイトの「俳句文学館(世界の俳句資料センター)」のページ↓には;
http://www2.famille.ne.jp/~haiku/intro.html
“俳句文学館は、社団法人俳人協会の運営する図書館で、日本で唯一の俳句文芸専門の図書館です。/収蔵図書は2003年4月末日現在、句集46,118冊、俳句雑誌271,611冊に及び、これはどなたでも自由に閲覧することができます。”とあります。

・正味1時間ほどしかない時間のなかで、ページ数が少なければその部分のコピーだけでももらおう、と思っていたのは前田普羅の「ホトトギス」掲載のエッセイ(震災記?)でした。中西舗土さんの「俳人の震災記のなかでもたいへんすぐれたもの」という紹介があり、それにもかかわらずその表題が「ツルボ咲く頃」というユニークなものであったからでした。

・震災の翌年の「ホトトギス」の2月号だったはず・・・、と思い“戦前の「ホトトギス」見たいのですが”といったら“資料番号いりませんから、何年の何月号かだけ書いてください。”とのこと。
・・・好きな俳人が何人かいる、「歳時記」という文化に興味がある、というだけで、俳句とは無縁の人間が、戦前の「ホトトギス」などをこうした資料館で借り出すことになろうとは、数年前には予想だにしなかったこと。が、さすがに半年分綴じられた古い「ホトトギス」が目の前に差し出されたときは、「おお、これが・・・」としばし感慨にふけったものでした。

ところが!、ざらついた紙の古い句誌のページをめくっても、それらしき文章はどこにも見あたらないのでした。

■2003/06/15 (日) 「俳句文学館」(3)―「ツルボ咲く頃」

・関東大震災〔1923年(大正12年)〕翌年を、私はあせっていたせいもあり「大正14年」と閲覧請求用紙に書いていたのです。瑣末な経緯は省きますが、時間を気にしながらようやく“ホトトギス第二十七卷第五號(三百二十九號)大正十三年二月一日発行”にたどり着き、さっそく高濱虚子、原石鼎、渡辺水巴という名前のならぶ目次と本文あわせて7ページのコピーを頼んだのでした。

・《野には「ツルボ」が咲いていた。
大正十二年九月一日、「ジャパン・タイムス」横浜支社の柱時計は静かに長く十二時を打った。事務所のあるじ久内君は自分に構わず、遠雷の如き響を立ててタイプライターを打っていた。
「帰ろうか」と自分が言い終わった時、突然微震を先駆としない強震が椅子を突き上げた。》

拾い読みするだけでも、そこに居合わせているような気持ちにさせる揺れの描写や、“○○人が日本人を殺しに来る”という男の怒鳴りに「女子供は呼吸も止まるほどに恐れた」というくだりも震災記としてはたしかにすばらしいもの。が、これこそが普羅にこの一文を書かせた思われる「集めたいと思うだけ集めた三千余冊の書籍」との無言の別れとその諦観の記述は、確かに一読に値するルポルタージュと思われる。

《洋傘一本牛皮のゲートル靴二足椅子二脚だけが自分の身につくものとして取り出された。(避難中も勤務先の)山下町から手に放さなかった「善の研究」は永久の分かれを告ぐるべく散乱した書籍の上に置いた。》
そして普羅は火の手の迫った“半潰れの家”を後にするのである。

・普羅の富山での句集『飛騨紬』『能登蒼し』の現物にも接して満足して、あわてて建物を飛び出したことでした。
ただし、地元の図書館にもない『能登蒼し』の序文〔←大震災の翌年、報知新聞の「富山支局長」としての転勤の経緯などにもふれている〕をコピーする余裕がありませんでした!。

*《ツルボ》
http://www5.ocn.ne.jp/~hana-k/turubo/turubo.htm

※1階で、俳人協会発行の脚注名句シリーズ中、『石田波郷集』(註=村沢夏風)『橋本多佳子集』(註=橋本美代子)購入。

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