めぐり逢うことばたち

短詩・樹花たまには歴史の歳時記 by かぐら川

2006年09月26日

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さるさる日記
■2006/09/26 (火) “九月というに袷一枚で”―霜川の上京〔1〕

 “それでも好きな道だからどうしても遣り遂げるという決心をした。そして五六十円を得るために親族間を奔走した。駄目なので、やむを得ず友人に貸していた金を五六円集めて、それを持って、九月というに袷(あわせ)一枚で、東京に飛び出し、大胆にも下宿して金のあり丈の雑誌を買い集めて、それを下宿の狭い室で一生懸命に読みふけったものである。その時そうして本をしみじみ読んだのが、僕の文学生活に入ったほとんど出発点であった。そして、傍ら訳のわからぬものを書いていた。その時、最も頭に印象されて、僕の文学崇拝の念をいよいよ深くしたものは、森鴎外氏の「水沫集」一巻、その中でも「埋木」と「うたかたの記」と内田不知庵氏の「罪と罰」とである。無論「あいびき」も絶えず傍らに置いた。それらの作物を耽読するというよりは、むしろ熟読したものである。”

 三島霜川が作家生活の出発点を回顧し語った短文の一節です。この1894(明治27)年9月の上京後の辺りを、あらためて読み返してみると注目すべき言辞がいくつも見られます。例えば、“僕の文学崇拝の念をいよいよ深くしたものは、森鴎外氏の「水沫集」一巻”は、あっさり読み過ごしていました。で、さっそく「うたかたの記」を、文庫本で探し出しました。
(続)

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