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■2005/01/02 (日)
部屋を掃除にしよう |
部屋の掃除をしよう。
弟がそう言い出した。
久しぶりに屋根裏部屋から降りてきた弟。
久しぶりに見る、弟の寝間着の柄。
一階の洗面所から三階の私の部屋までホースが伸びる。
蛇口をひねるのは私の役目。
ホースを使って部屋を水浸しにするのは弟の役目。
弟のはしゃぐ声が階上から聞こえる。
階段を水が流れ落ちる。
弟の声はいつの間にか止んでいた。
水道の蛇口をひねるのは私の役目。
三階に上がり、弟の様子を確かめる。
弟はまた屋根裏部屋に戻ったようだ。
水浸しになった私の部屋にホースが転がっている。
ホースを片付けるのは私の役目。
弟の様子を見ているのも私の役目。
すっかり暗くなった部屋のカーテンを閉めるのも。
時々、屋根をつたってやってくる猫におやつをあげるのも。
弟の寝間着の柄をおぼえておいてあげるのも。
全てが私の役目。
そうして私は部屋の電気を消して、ベッドに寝ます。
真っ暗な天井に模様が浮き上がります。
屋根裏部屋の弟が話しかけてきます。
明日こそは、部屋の掃除をしよう。
もう、寝なさい。
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■2004/12/12 (日)
フルハウスに住む人 |
壁にはトランプのカードが画鋲で留められていた。
スペードのカードは全て横向きに留められていた。
ダイヤのカードは全て、どこかしらかじり取られていた。
ハートのカードは全部で十五枚あった。
全て裏向きに留められていたのはおそらくクラブのカードだ。
キングは全て壁のひび割れにそって留められていた。
3から7までのカードは壁際のテーブルの足に隠れるように留められていた。
ジャックとクイーンで四角い模様が形取られていた。
四方の壁にはトランプのカードが留められていた。
誰かが部屋に入ってきた。
明かりがつけっぱなしの部屋に入ってきた。
四本並んだ蛍光灯の一本は消えていた。
別の一本は明滅を繰り返して、虫の羽音を奏でていた。
入ってきた誰かは、蛍光灯を取り替えることもしなかった。
ポケットからカードを取り出す。
何枚かのカードを一枚ずつめくり、確かめる。
ダイヤのカードをかじり取る。
かじり取ったダイヤの一部はシンクに吐き捨てられた。
シンクには不規則なダイヤの水玉模様ができていた。
誰かはカードを壁に留め終えた。
テーブルの下に潜り込み、目を閉じる。
目を開ける。
誰かは、また部屋を出ていった。
トランプのカードは誰かを見送りもしなかった。
消えていた蛍光灯が数回、瞬きをした。
また、消える。
アロエの鉢植えが大きくなった。
私は来年で八つになるけど、私の背よりも大きくなった。
私の妹も来年で八つになるけど、私の妹よりも大きくなった。
アロエは鉢植えからはみ出して家中で大きくなった。
アロエは家からはみ出して庭からもはみ出して大きくなった。
アロエの緑色でギザギザした葉っぱが空にのびていった。
私達は青い空を緑の葉の間から見た。
白い雲がギザギザの葉に切られていくのを見た。
妹はアロエの葉に爪を立て薄い皮を剥がしている。
表面の苦いところを綺麗に剥がして、口に含む。
水分が口の中にひろがる。
妹とはぐれないようにしないと。
ギザギザに切り取られないようにしないと。
アロエはどんどん大きくなっていく。
私達もどんどん大きくなっていく。
みんな最後に行き着く場所は一緒だけど。
妹とははぐれないようにしないと。
まずは最初に僕の目を消してくれ。
その次は足で、そのまた次は耳だ。
どんどん消してくれ。気前良くやってくれ。
消えてしまったことにも気付かないぐらいに。
それぞれの記憶ごと持っていってくれ。
子供の頃からの長い付き合いだから。
こいつらに感づかれないように慎重にやってくれ。
そうやって何もなくなったらさ。
最初からなかったことにしてさ。
誰の記憶にも残らないようにしてさ。
消えちゃった僕は南の島でゆっくり羽を伸ばす。
だから羽は消さないでくれ。
できれば南の島も。
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■2004/11/15 (月)
ミッシィ・リンキィ |
きょうはドーナツやさんに行った。
ドーナツをたくさん食べた。
おなかいっぱいになった。
ふくにケチャップがついた。
おおぜいの人におっかけられてる夢をみた。
こわかった。
なかなか夢からさめなかった。
ふとんがいつもとかわってた。
へやのもようがえをした。
誰かが。
もうすぐ冬になります。
犬がくしゃみをした。
ふくにケチャップがついた。
またへやのもようがえをした。
誰かが。
おなかがいっぱいになりたい。
人間凶器と呼ばれているのに誰一人傷つけることなく一生を終えた。
そんな親父の血を引く俺は人間凶器息子。
下品な発想はやめろ。
誇り高い一族の血が流れる俺ですが偉大な父親とは違って凶器丸出しです。
だから下品な想像はやめろ。
常に凶器丸出しな俺は満員電車に乗ったりすると血塗れになる。
O型A型B型AB型、自由自在です。献血に協力したいぐらいさ。
そんな俺も恋をする事だってあるんだぜ。
満員電車の同じ車両でいつも見かける彼女。俺は彼女に夢中の人間凶器。
彼女を傷つけたくない一心で人の波をかき分け余計な血を流したりします。
それだけ本気だってことだね。
でも、彼女と俺は結ばれない運命。
だって俺が彼女を抱きしめたりなんかしたら彼女血塗れ、俺涙。
血液型も知らない彼女の赤い血が俺の体を染めることだろう。
だから俺は遠くで彼女を見つめるだけ。
片思いの人間凶器だぜ。
いつかは気付いてくれるだろうか。俺のこの悲しい恋心をってば。
渋谷の街を血で染める俺の恋心とかをさ。
動物園のふれあい広場を血で染める俺の恋心とかもさ。
マリンスポーツが似合わない俺の恋心とか。
鬼ごっこの鬼をやるとみんなが必死で逃げる俺の恋心とか。
家中のコードというコードを断線させた事がある俺の恋心とか。
俺の恋心も俺の体の一部である以上は凶器なので。
彼女もいつかは俺の恋の矢に撃ち抜かれる日が来るのだろうか。
そんな事を考える俺ってちょっとナイーブな詩人みたい。
詩人間凶器みたい。
もし、私の願い事がかなうならば翼が欲しい。
鳥人間凶器みたい。
もし、私がナンバーワンじゃなくてオンリーワンでいいのなら。
俺はいつまでも人間凶器二代目。それが俺の存在意義。
存在意義の意味は漠然としか分からないけれど。
それが俺。人間凶器さ。しかも恋に落ちた。
シェイクスピアだってイチコロだぜ。
シェークスピアって書きそうになったのは内緒でイチコロだぜ。
でも彼女との恋の行方は誰にも分からない。俺にも分からない。
ただ、血塗れにならない事を祈る。
大抵の人はよく死にます。
この現象は日常の至る所で見られる。外に出れば尚更です。
人は自分にとって親しいと感じている人間の前では驚くほど多くの独り言を喋ります。
眠い、腰が痛い、足が重い、怠い、疲れている、金が無い、つまらない、等々。
私は独り言というとこういったネガティブなもの以外に耳にする事がまずない。
その独り言が私に与える影響はこの際、置いておくとして、私にはとても滑稽に見える事がある。
腰や足が痛いなどと言っている人は得てして日常で、体を痛めるような動きをしています。
疲れがとれない、怠いなどと言っている人も同じで、体の疲れが溜まるように生活している。
きっと当人達にしてみれば、生活のためだから等と理由付けをするでしょうから、これも置いておきます。
にも関わらず健康のためと言ってはウォーキングやジョギングなどをしますね。
しかも体を壊すようなやり方のままで。
そういった健康のための運動を続けていき、肉体の限界がきたら、悪くなるままに任せる。
きっとどこかで悟るところがあるのでしょう。
死というのを悪いものだと考えるのであれば、物事は常に悪い方向に進んでいる、と。
でもその考えを肯定するにはみんなの中に抵抗がある。だから他者の同意を求めているのではないでしょうか。
それが独り言といった形で日常に現れる。
しかしこの関係はまるで地獄の一場面のような印象を受けます。
お互いがお互いの生を否定しあう。同意を強要し、物事を常に悪くしていく。
勿論、本人にその自覚は無いでしょう。しかし結果としての死は残る。
誰もが自分の行った事には目を向けない。
誰もが自分が殺されたとは気付かずに死んでいく。
私にはそう見える。
こういった世界からは早々に足を洗いたいと願う人もいます。
しかし抜け出す方法を見つけだすのは容易な事ではありません。
例え見つけたとしても、日常という世界が押し寄せてきます。
世の中にはこの戦いを常に続けている人がいる。
訳知り顔で、そんなのは妄想、空想の類だ、と言い放つ人もいる。
彼らのどちらもが異なった現実を持っています。どちらも現実の世界です。
ただ、大抵の人は、よく死ぬという現実を選ぶ。
そうやって誰かを道連れにします。
道を歩く、壁にぶつかる。いや、人生とかは関係ない。
毎日の生活の中で家から出るとそこには道が存在しがちですから。
道には壁があるのが普通だと思いがちな都会のもやしっ子ですから。
その壁には色んな落書きがしてあったりもします。
してなかったりもします。
道にはマンホールの蓋があるのが普通だとも思います。
マンホールの蓋には色んな模様や記号がかいてある。
それから、電柱にも、表札にも、標識にも、その他大勢にも。
道を歩く人たちはシャツや帽子を着ている。
外国の文字が書いてあったりする。
だからそこに意味を読みとろうとするのは当然の心理だとも思った。
きっとみんな何かを知らずに伝達しようとしてたりしてたり。
そういうのを知らずに受け取ったりしてたりしてなかったり。
それらに敏感になる事で分かったりする事もなかったりあったり。
とったりとられたり。
もらったりもらわれたり。
ガリバー旅行記をもらったり。
オリバー旅行記をもらわれたり。
ものもらいをもらったり。
おもわれにきびをもらわれたり。
こんな事を道を歩きながら考えている。
壁にぶつかる。
あの日あの時あの場所で、私は何をしてました?
名前を聞いてもわからない。
お家を聞いてもわからない。
らんらんららんらんらんららん。
泣こうとしても涙はでない。
ひげのお巡りさん、困ってしまったかしら。
らんらんららんらんらんららん。
壁の模様を迷路に見立てても、同じ所を巡ります。
目が疲れた時には緑色のものを見るといいそうです。
ブルーベリーも目に良いらしいです。
でも、この部屋には緑もブルーベリーもないの。
ひげのお巡りさんしかいなくて困った私は。
らんらんららんらんらんららん。
引き出しのついてない机なんてつまらない。
肘掛けのついてない椅子なんて疲れるわ。
カーペットの敷かれてない床も嫌い。
吸わない煙草の灰皿があるのも嫌い。
ひげのお巡りさん、口から煙を吐き出して。
らんらんららんらんらんららん。
らんらんららん。らんらんららら。
らんらららん。らららんらん。
窓に当たる水滴を見た。
洗濯物が心配になる。
らん。
密室、なんて大抵の人は実在はしないもののように思いがちです。
しかし密室はこの世に実際に存在するのです。略して、実在するのす。
僕は写真にも撮った。
コンピュータを使った鑑定の結果は本物である可能性が高い。
ざまみよ。
この写真を突きつけられたら、この目で見るまでは信じない、などと言っていた隣の隣人も驚いて驚愕する事は間違いなく相違ない。
それでも信じないという頭の固い人もいるでしょう。
だから念の為にもう一つ用意してあります。
どうだ。
それは事件だ。やはり密室には事件がよく似合います。
富士山麓には鸚鵡がよく似合う、みたいなニュアンスです。
多分、あってます。みんなの前で言っても恥ずかしくない。
話を戻しますが、密室には事件が付いて回ります。
いやだと言っても勝手に付いてきてしまうのです。
むしろ事件の方が密室を連れ回しているという見方さえできない事もない。
ですから密室なんて信じないしあるわけないじゃん、なんて言っている人でも密室に事件がくっついちゃうと、うんベストカップルだね、みたいな感じのニュアンスで漢字で書くと乳杏酢。
違う。
ですから転校したての密室をクラスのみんなと仲良くさせるために事件を起こそう。
ぐらいのニュアンス的な何かが必要不可欠といった感じを彷彿とさせ気味です。
そこで一計を案じた新米熱血教師は事件を起こしました。
それが原因で学校を辞めさせられました。
密室は心に深い傷を負ったままその後の二年半をクラスの誰とも仲良くなれないまま過ごしました。
そんな密室が可哀想だと思うなら信じてあげて下さい。
密室は良い奴なんです。見てのとおり開けっぴろげな性格ではありませんが。
でも、心根は良い奴なんです。見えないものを良く言うのは簡単です。
逆に言えば。
全然、逆に言っていないのにこういう言い回しをする人もいます。
そうなんです逆に言うならば本当に逆に言うべきなんだ。
強く主張します。逆に言って下さい。
新聞紙とか、竹藪焼けたとか、山本山とか、山本小鉄とか、言って下さい。
どうですか。この要領です。
密室を逆に言うんです。
もっとオープンになる。開店セールです。大売り出しです。
もう事件なんて奴の事は忘れて、俺と付き合いなよ。
でも、彼の事が忘れられないの。そんな健気な密室にぐっとくるはずです。
そうして二人は手に手を取って誰も知らない土地へと去っていきます。
これが密室事件という。
そういうニュアンスで。
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